こんにちは!
こころとからだのライフステージが変化する大人女性へ、アロマテラピーと温熱のナチュラルケアをお届けしている、ウエダカオリです。
不思議なのですが、ある香りを嗅ぐと、自分の経験や思い出と重ねて、
「あ、これ、あの時の香り!」
「おばあちゃんの家の匂いだ」
「あの時読んだ本の匂い」
「あの時食べた、あれを思い出す!」
「こんな場所に行ったよね」
などと、香りをきっかけに、忘れていた記憶に、パっと、灯がともることがあります。
あなたも、そんな経験がありませんか?
香りは記憶とつながる:プルースト効果
こんなふうに、ある特定の香りを嗅ぐと、過去の記憶や感情が呼び起こされることを、「プルースト効果」と言います。
「プルースト効果」という名前は、フランスの作家マルセル・プルーストが書いた、「失われた時を求めて」という長編小説のなかのエピソードに由来しています。
この小説の中で、紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、その香りに刺激されて、主人公の幼いころの風景が鮮やかによみがえる、というシーンが描かれています。 そのことにちなんで、プルースト効果と名付けられました。
余談ですが、この小説、非常に長いお話なんだそうです。なんと、ギネスに「最も長い小説」として、認定されているとか。
プルースト効果のエピソード
アロマテラピーの学校に通っているとき、講師の方が、「こんなことが有ったんだよね、」と話してくださいました。
それは、老人ホームでのハンドケア・ボランティアに参加されたときのおはなし。
ご年配のお客様が、ローズの香りを嗅がれたことで、ご自身の初恋のお話を思い出され、当時の話を色々と懐かしくお話してくださったのだそうです。
初恋の恋バナを思い出されるなんて、なんだか可愛らしくて。その方にとっては素敵な記憶の一ページなんだな、って思ったのですよね。歳を重ねても色あせないんだなぁって。
ローズの香りと、初恋の記憶。
そう!
何か、思い出しません?
少し前に流行った、瑛人さんの歌、「香水」!
これも、プルースト効果のエピソードなのです。
ドルチェ&ガッバーナの香水の香りで、当時付き合っていた彼女との色々が思い出される、っていうね(笑)。
この歌をいろんなところで耳にして、切ない歌の詩よりも、ドルチェ&ガッバーナの香りが一体どんな香りなのかが、すーっごく気になってしまった私です。(ゴメンナサイ)
今も昔も変わらない。恋にプルースト効果
現代だけの話じゃありません。
平安時代の貴族も、プルースト効果を狙っていましたよ!
当時、香は大変に高価なものだったので、貴族でしか手にできないものでした。
様々な香を組み合わせて良い香りを作れることは、高い知性と教養の表れとされていた時代。
文に香りを忍ばせたり、衣服に香りを焚き締めたり、調合した香りを匂い袋にして衣に忍ばせたりと、お部屋に香を焚くだけでなく、色々な形で香りを纏おうと様々な工夫がされました。
当時の貴族の男女は、御簾や屏風越しに言葉を交わすような習慣だったため、相手の顔が良く分からないことも有ったでしょうが、その人の衣に纏われた香りで、その人のありようを推測できる情報でもありました。同時に、「この香りは、あの方だわ!」と、意中の人に自分の存在を伝える術でもありました。
コミュニケーションの中で、香りの存在や効果が、今よりももっと大きな役割を果たしていた時代です。
プルースト効果のメカニズム
さて、目線を恋バナから、プルースト効果のメカニズムに向けてみましょう!
わたしたちは、五感というものが備わっていますが、香りをキャッチするのは=嗅覚です。
嗅覚でキャッチされた香り分子は、脳の中の「大脳辺縁系」という部分にダイレクトに伝わります。この大脳辺縁系は、「本能の脳」ともいわれる部分で、人の生命をつかさどる重要な役割を担っているところ。
その大脳辺縁系の中に、「海馬」と呼ばれる、記憶をつかさどる部分があって、嗅覚はそこと影響しあっています。
また、海馬に隣接する「偏桃体」という、感情をつかさどる部分とも連絡しあっているため、香りを感じることで、過去の記憶を思い出したり、感情が動かされる、という事が起こります。
私たちの身体に備わる仕組み、こういうことでも相互に影響しあっているのが、面白いですよね。
だから、香りで、忘れていた記憶や感情が沸き上がったり、その時感じた香りが、その時の出来事と共に記憶に残るのです。
身近にきっとたくさんあるはず
プルースト効果、香りと、記憶、脳のメカニズムについてお話しましたが、
日々の暮らしの中で、「あ、これどこかで嗅いだ香り!」と思う瞬間が、きっとあると思います。そんな時は少し立ち止まって、その香りに繋がるあなたの記憶の箱を、ぜひ開いてみてください。面白い発見や、懐かしいエピソードがポロリと出てくるかも。
気持ちを向ければ、身近にたくさんのプルースト効果があるはずですよ!