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嗅覚障害とQOL(Quality of Life)

八ヶ岳の麓、香りと手当ての小さなサロン、nanaflor ナナフロールです。

今年はなんだか緑の勢いが旺盛で、若葉の緑がとても美しくて、散歩も楽しい。

 

晴れの日、雨の日。 春、夏、秋、冬。

お天気や季節によって、森の匂いも変わります。匂いから感じるものや情報って、とても大きいって思いませんか?

でも、もしその匂いを突然感じなくなったら。 想像してみたことありますか?

 

 

目次

嗅覚障害

コロナ渦で何度も耳にするようになった「嗅覚障害」。私も香りを仕事にしている一人なので、この言葉に関連する情報には、つい目が留まってしまいます。

嗅覚障害は、「聴覚や視覚障害に比べて行動制限はさほどない」と、近年までそんな認識をされていたため、医療の現場でも研究の現場でも、嗅覚の領域の研究はほかの分野に比べあまり進んでいませんでした。

90年代に入って初めて、匂いを感じるメカニズム「嗅覚受容体」の存在が明らかになり、急速に嗅覚領域の研究が進みだしましたが(嗅覚受容体の発見は、2004年にノーベル生理学・医学賞を受賞)、嗅覚はまだまだ未解明なことが多い領域です。

 

嗅覚障害は、その字のとおり、匂いに対する感覚がうまく機能していない状態です。

いくつかタイプがあって、

嗅覚鈍麻(Hyposmia) 嗅覚の感覚が鈍くなる。

嗅覚消失(Anosmia) 嗅覚を失う

嗅覚過敏(Hyperosmia) 匂いに過敏になり、頭痛や吐き気など身体的な苦痛を伴う

等があげられます。

先天性のものであったり、交通事故などの後遺症、神経障害、鼻疾患、薬剤等、原因はさまざま。

 

ここで、自分には縁遠いかも、と感じるかもしれません。でも、意外に近くに経験者がいるかも。

私も、友人や、勉強会でご一緒した方から、「実はね、」って聞いたりして、自分が思っていた以上に身近にある出来事なんだと知りました。

たとえば、

  • 花粉症の薬を飲んで、一時的に嗅覚障害になった
  • covid-19の後遺症で嗅覚障害を発症した
  • 過度のストレスで嗅覚障害に陥った
  • 若い時に慢性的だった副鼻腔炎の手術をして、一時的に嗅覚障害。術後のリハビリとして香りを嗅ぐトレーニングがあった

こんな風に、きっかけはcovid19に関わらず、普段の生活の中で起こることもあって、誰にでも可能性があることなんだと、話を聞いて思いました

 

嗅覚障害が引き起こすQOLの低下

嗅覚障害に陥って、何が起こるかというと、Quality of Life(QOL)の低下です。例えば、

  • 食べ物の味が分からなくなる(感じなくなる)
  • 自分の体臭を感じることが出来ない(他人との距離感が分からなくなり、不安に陥る)
  • 危機管理が出来なくなる(燃えている匂い、ガスの匂い等を感じられず、命の危険にさらされる可能性)

重大そうにないことばかりに思えそうですが、これらはメンタル的に大きなダメージがきます。特に食事。食べる喜びが激減するんです。

味覚の80%は嗅覚からの情報ともいわれていて、それが全く感じられなくなったらどうなるでしょう?

お肉はゴムみたい。パサパサしたスポンジの様。

そんなだったら、きっと何を食べても美味しいと思えないだろうし、楽しくない。食事する気にもならなくなって、それが長期にわたると気力を削いでしまう。

味覚に影響するだけではありません。

匂いが分からないと、自分の体臭も分からなくなる。それが不安をつのらせてしまうことも。他者との距離感、コミュニケーションが上手くいかなくなり、気持ちが塞ぎ、鬱的傾向に陥ることも心配されます。

嗅覚は命の危機を回避するための本能的な部分にも作用しています。期限切れでも食べれるかな?という判断、クンクン匂いを確かめて判断しませんか?「これはもう危ないな」ということを、匂いで判断していたのに、それが出来ない。となると、腐ったものを誤って口にしてしまう可能性もあるし、何かが燃える臭いやガスの臭いを感じとれなくて、命の危機に直面してしまうことも有りうる。

あって当然、感じて当然、と普段意識もしない感覚だけど、それが無くなるということは、思っている以上に日々の暮らしの質に大きく影響するんです。

 

香りを使って嗅覚トレーニング

症状を改善するため、どうしたらいいのか?

その効果的な方法として、香りを使った嗅覚トレーニング(olfact training)が勧められています。

科学誌 natureでも、covid19と嗅覚障害に関した記事が2021.01に掲載されていたり、

Tissland institute の blog でも、“Olfactory Training and Recovery Smell Loss” というタイトルで2021.11に記事が掲載されています。主に嗅覚トレーニングの臨床とその有効性について書かれているのですが、どういう形で嗅覚トレーニングが体系化されていったかという背景も分かるので、ご興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。私も辞書を片手に頑張りました(興味のあることなら多少の苦手に向き合える笑)。

嗅覚トレーニングの方法は、嗅覚障害、嗅覚トレーニング、olfact trainingなどで検索すれば、すぐに情報が出てくるはずなので、ここではあえて書きませんが、知っておくと必要になった時に役立つので、興味のある方は調べてみてください。トレーニングの効果には個人差があるけれど、1つの手段として知っておくことで、きっと心の持ちようが違うとおもいます。

もちろん、症状を見極めるために、ちゃんと「専門家に診てもらう」ことも大事なので、そこも忘れないでくださいね。

 

 

 

 

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